未払賃金があるなら、遅延損害金もつけてもらわないと。

民法が改正されて、遅延損害金の利率が改定された。前は民事法定利率と商事法定利率の二本立てで、前者が5%、後者が6%だったが、それが統一されて3%になった。すなわち、2020年3月31日までの未払い賃金については商事法定利息の6%が、2020年4月1日からについては3%の法定利息を付加して請求できる。

ところで、遅延損害金とは何か。遅延損害金よりも遅延利息という言い方が一般的なので、紛らわしい延滞利息と比較してみる。この違いについては、「延滞利息は、当然払うべきはずなのに遅れていた利息であり、それに対して遅延利息は元本の弁済が遅れたことの損害賠償である」(我妻栄「民法案内」債権総論)。あくまで損害賠償である。

なお、民法419条では、金銭債務の特殊性から「債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない」とあるから、債務不履行責任であるにもかかわらず、債務者側の過失を要件としているわけではない。ここは注意したい。「うちに落ち度がないかぎり遅延損害金は支払わなくていい」。こういうヘリクツ言うのがいたからね。

改正民法(金銭債務の特則)第419条

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

2  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。

3  第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

使用者が退職した労働者に対して割増賃金の全部または一部を退職日(退職日の後に支給日がくる場合は当該支給日)までに支払わなかった場合には、退職日(もしくは当該支給日)の翌日から年14.6%の遅延損害金を請求することができる(賃確法6条1項、賃確法施行令1条)。

ただし、支払いを遅延している賃金の全部または一部の存否にかかる事項に関し、合理的な理由により、裁判所または労働委員会で争っている場合にはこの率は適用されない(賃確法6条2項、賃確則6条4号)。

「2018労働事件ハンドブック」P109

あとこれもね。

労基法第 23 条 使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があ った場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金そ の他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければなら ない。

退職した従業員が請求したときから7日以内に賃金を支払わなければならないのよ。会社の就業規則等で,賃金の支払日が毎月13日と定められていても,退職後に請求を行った場合には,請求日から7日以内に賃金を支払いなさいということです。ただし,賃金額等について,使用者と労働者の間に争いがある場合には,双方に異議のない部分についてのみ7日以内に支払えばよいとされている(同法同条第2項)。

遅延損害金について具体例で説明したい。こういう場合はどうなるか。支払ってもらえるのかどうか。もし支払ってもらえたとして、どれくらい支払ってもらえるのか。

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