急逝した元従業員等からの請求がないからと、残業代を支払わないHMIホテルグループ

残業代等を受け取る前に亡くなった従業員Kさん

2020年7月に解雇され、10月に急逝された組合員(他労組)がいました。組合活動に比較的熱心な方だったのですが、こちらが電話なりメールなりすると、すぐに返事をもらえる方だったし、彼女からもちょくちょく電話やメールをしてきていました。それが10月の初旬にパタッとなくなった。労基署に同行すると約束していたのです。その後、何度も電話やメールしたものの、反応なし。気にはしていたものの、どこか気まぐれなところのある人だったし、個人的な付き合いがあるわけでもなかったので、音信不通なままになっていた。

翌年になって、元同僚の人からKさんどうなったか知らんか。連絡とれんのやとの電話がありました。いや、こっちも連絡とれんのです。ご本人も「おカネないから年越されんわ」と言っていたし、 「身よりがないから、いつ死んでもいいように、部屋は小奇麗にしている」とか、「すぐに悲観的になって不眠気味だ」とか言って悩んでいたのを思い出し、急に心配になりました。それで、自宅アパートを訪問することにしました。

で、昨年2月10日に自宅に行き、不在。自宅前がちょうど区長宅だったので区長さんにお伺いしたら、1か月以上も前に自宅で亡くなっていたのが発見されたということでした。合掌。

自殺の可能性はないのか

こんな事情のある人だったので、当然、自殺を疑いました。本人いわく、軽い心臓の持病があるとも言っていたので、60歳という年齢もあり、病気で亡くなった可能性も、もちろんあります。が、しかし、解雇から3か月ちょっとでの死亡との密着度や彼女の発言なども考えると、やはり、解雇と死亡との因果関係がまったくなかったとは言いにくいでしょう(というよりも、ふつうは大いに疑うべきです)。

私のかつて書いた記事だけれど、ご参考までに。

「自殺」は、どのようにして決まるのか

本社は、請求してこないから支払えないと言っているんだが

それはさておき、問題なのは、この人は会社に残業代等の請求をしていたことです。ところが本人が亡くなっちゃった。残業代や退職解決金の支払いは、本人が亡くなったことにより、会社は支払わなくていいのかどうかです。勤務先だったHMIホテルグループは、本人が死亡しており、相続人もいないようだが、請求がない限り、支払わないと、団交時に言ってきました。

おい・おい・おーい。それ、ヘリクツじゃないのか? この場合、法律ではどうなっているかです。

従業員に相続人がいなかった場合はどうなるか

従業員が亡くなった。まだ未払い賃金が残っているなら、亡くなった従業員は受け取りようがないから、従業員の相続人が相続し、請求することになる。が、相続人がいるかどうかは実を言うとかんたんではない。ときに、被相続人(ここでは従業員のこと)がまったく知らない人が相続人だったりする。相続人の確定作業を自分でやろうと思ったら、ときにたいへんが作業になることがある。以下の「笑う相続人」に言及した記事では、そのたいへんさをとりあげた。

「笑う存続人」がいたことがあった。

天涯孤独の人の相続人探しというのを実はやったことがある。けっこうたいへんな作業だし、戸籍から追うのだが、戸籍ひとつでわかるわけでなく、原戸籍、除籍簿など多くの戸籍関係の書類を入手する必要がある。身寄りのない人の場合それなりの時間と労力を要する。が、自分には戸籍を入手する資格がない。

昔やった保険調査では、亡くなった本人とはほとんど面識のない「笑う相続人」がいることが判明したことがあった。こちらの記事でそのことについて書いたことがある。

家裁への相続財産管理人の選任

こんな作業をやらされたのではたいへんなので、通常というか、法律のタテマエでは家裁に相続財産管理人の選任を申し立てることになっている。問題は申し立てることが、勤務先にできるかどうかだ。ネットで調べてみるとその内容はこんな具合だった。

相続財産管理人は、家庭裁判所で選任してもらわなければなりません。 選任申立てをできるのは、「利害関係者」や「債権者」「検察官」です。 たとえば被相続人にお金を貸していた人、内縁の配偶者、献身的に介護を行っていた人や法定相続人ではないけれども特別に親しくしていた親族などが申立てをできる可能性があります。

被相続人に権利のある人ばかりやないか。義務のある人はどうなんやろ。家裁の書記官に聞いてみた。そしたら、「相続債務者」も申し立てることができる。したがって、「相続債務者」たる「勤務先」も申し立てることができる。

「できる」とはいえ、権利を主張するのでなく、義務を果たすのだから、未払い分の支払いをするために勤務先に家裁へ申し立てるインセンティブが働かない。相続財産管理人選任の費用もバカにならないと聞いたので、なおさらそうである。

履行遅滞を回避するために法務局に弁済供託する

(つづく)

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