問題社員とかモンスター社員とかは、「問題企業」のすり替えにすぎない

「問題社員」という名の「問題企業」

「黒人問題」という名の、「白人問題」。すなわち、「白人による黒人差別問題」の言いかえなのだが、問題のないほうに責任転換し命名して、問題の本質を糊塗しようという姿勢がここにある。この「問題社員」とか「モンスター社員」とかもその同類である。「問題社員」という名の「問題企業」である。

ブラック社労士で有名になった事件

「問題社員」とか「モンスター社員」とかがネットでも氾濫している。この表現に違和感ありありだったのだが、それを決定づけたのはもう何年か前の、いわゆるブラック社労士の存在だった。当時の新聞記事から引用しよう。

愛知県内のベテラン社会保険労務士の男性が「社員をうつ病に罹患(りかん)させる方法」と題した文章をブログに載せ、県社労士会が問題視して今月に調査を始めた。職場での取り組みに逆行するような発信はネットでも批判され、厚生労働省愛知労働局も事態を重く見て調べる方針だ。

問題の文章が載ったのは11月下旬。「すご腕社労士の首切りブログ モンスター社員解雇のノウハウをご紹介!!」と題した連載の40回目で、上司に逆らったり遅刻したりする社員を「うつ病にして会社から追放したいのだが」という質問に答える形だった。

ブログでは、「失敗や他人へ迷惑をかけたと思っていること」などを社員に繰り返しノートに書かせるよう勧めた。「うつ状態は後悔の量が多いほど発症しやすい」とし、社員が自殺した場合の助言もあった。

ネットでは「あまりにひどい」などの批判が起きた。「ふざけるな!」といったメールを数件受けた男性社労士は「怖くなった」として、12月上旬に連載をすべて削除した。

国家資格の社労士は「適切な労務管理その他労働・社会保険に関する指導を行う専門家」(愛知県社労士会)。同会では40回目の内容について「多くの人が自殺に追い込むような主張と読む。同じ社労士として迷惑だ」と批判が出ており、調査を開始した。(略)

男性社労士は聴取に対し、「うつ病に罹患させる」というのは本旨でなく「筆が走りすぎた」としつつ、「表現の自由」の範囲内と主張したという。

(朝日新聞デジタル 2015年12月19日「ブログに「社員をうつ病にする方法」 社労士を調査)

「以下、省略」でいいよ。メンドーくさいので

問題社員とかモンスター社員という言葉をこの件にかぎらずときどき目にする。モンスター=怪物なのだから、私のイメージするところは、会社の金をネコババはする。仕事をやらずさぼりばかりする。無断欠勤、遅刻の常習はするというようなものだ。ネット検索すると、実際にもそういう例を挙げているサイトもあった。そして、そういう社員を入社阻止するには、履歴書の転職回数を重視せよと書いてあるサイトがいくつもみつかった。

実を言うと、私は両手両足の指を数えても収まりきらんかもしれないほどの転職経験者である。それに加えて、無職というか、海外に旅行していた長期間の空白が何度かある。履歴書は、転職が少なかった最初のころは職歴をまじめに書いていた。が、そのうち、ある時点から(職歴欄に収まりきらなくなってから)そういうのをいちいち思い出すのがめんどくさくなったので、「以下、省略」と書いた。

たいていはそこでひっかかってダメなんだが、じゃ、正確に書いたらよかったのかというと、これはもっとダメだろう(苦笑)。細かいことを言うな。「以下、省略」でも気にしないというか、それでも面接してくれる会社でいいと思うようになった。そうすると、ブラック企業にあたる確率もグーンと高くなる。その結果のひとつが、このHMI(ホテルマネージメントインターナショナル)社だったわけだ。脱線したので戻そう。

問題社員やモンスター社員の見分け方で、転職回数を数えろということになると、私がまさにそうである。しかし、だからといって、私は会社の金をネコババしたこともなければ、仕事をやらずサボったこともないし、無断欠勤も遅刻の常習者ということもない。ここ6年間で、欠勤は1日もなかったし、遅刻も、その日が休みだと勘違いしたため30分遅れたのをふくめ2度あるだけだ。年次有給休暇だって付与されているはずなのだが、会社側がだんまりを決め込んでいるので、これまでに年休を使ったことがない。休日出勤を要請されたことが何度かあるが、ただの1度も断ったことがない。

どうだ。社員の鏡だとか、優秀だとかまではいわない。が、自分で言うのも変だが、まじめなものである。

これほどの職歴の多い私でも、これまでに1度も問題社員やモンスター社員からイメージするような社員に出くわしたことがない。それどころか、たいていは上司や社長に何を言われても押し黙るか、へいこらしている。無断欠勤で退職させられた例はあったが、そういうのはすぐにも解雇させられた。私がイメージする問題社員やモンスター社員はこのようにすぐに辞めさせられるか、そうでなかったら、会社にいて何されても平気な神経の天下無敵の無責任男(女)なのだから、うつ病になんかかかるわけがないのだ。

問題社員やモンスター社員とは、その実態は順法意識の高い社員のことである

では、あの「モンスター社員をうつ病にして退職に追い込もう」としている「モンスター社員」とは、実際にはどういう人たちなのだろうか。ネットで検索して調べてみると、権利意識の高い社員のことのようだ。たとえば、サービス残業を強いる会社に労働基準法を持ち出して自分の正当な権利主張をする社員。あるいは、会社の不当労働行為に対して、労働組合法を持ち出して組合活動への不当な干渉だと抗議する社員。

そういう社員もどうしてだか(?)「問題社員」「モンスター社員」に含まれていた。そういう社員ならまじめだから、うつ病にもかかるだろう。しかし、なんてひどい話だ。

「ホームレスと同じやないか」と言い放ったブラック社労士

いま務めている会社(異動命令拒否中)は、事業所閉鎖のために「やめるしかない」と言われた。その際に同席したのがブラック社労士である。私は、この6年間、何度も要求したのに社会保険に入れてくれなかったことの責任を会社に追及した。ところが、同席したこの社労士は、会社が社会保険に入れなかったことの非をタナにあげて、ちょっと気になることがあります。加入期間はどれくらいですか。失礼ながら、加入期間に満たないホームレスの例もあるからと、言い放った。

なんだ、その責任転嫁の言い草は。(録音を精査して、社労士の正確な会話内容を確認し、表現を改めるつもりです)。そもそもだが、加入期間がどれくらいなのかは会社はわかるはずである。また、このような「ホームレス発言」は人格権の否定であり、名誉感情を害するものだ。

「いかなる「勧奨」が違法になるかについて、代表的裁判例は、「被勧奨者の任意の意思形成を妨げ、あるいは名誉感情を害するごとき言動」をあげている(西谷敏「労働法第3版P451)

社労士の先生でこんな不真面目な人はたぶんほとんどいないだろう。たいていはまじめに、人の迷惑をかけぬよう、お仕事をされている。労働者をうつにさせてやるなどという輩はごく少数だろう。こんな社労士の評価をさげるような人物をこのままのさばらすわけにいかないのである。

いま、団交中なのだが、そのときの社会保険労務士の氏名を教えるべきだと、私は会社に要求している。実名が判明しだい、こちらに載せるつもりだ。

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