休憩時間は実労働時間に含まれないのが原則であり、休憩時間中に労働を余儀なくされたことは、原告が主張立証責任を負う(「要件事実マニュアル4」)。
休憩時間は労働時間に含まれない。が、実際は休憩時間だからといって必ずしも休憩できるわけでなく、仕事をやることはある。が、その立証はむずかしい。会社側管理者がそのことを証言してくれるはずと組合員が主張したので、すでに本社と係争中であり、本社側の人間にそれを期待するのはなかなか困難である。
だって、A支配人は本社からそんな証言したらにらまれるだけですまず、会社にいられなくなるかもしれない。退職したB支配人は退職時に本社と守秘義務の契約を交わしているはずだから、会社に不利なことを言えないだろう。
そういうリスクをおかしてまで、私たちの側についてくれる「正義の味方」を期待しないほうがいい。自分が同じ立場だったらやはりできないものね。だから、この方々の証言を期待しているのだったらむずかしく、まず無理やとおもったほうがいいし、この方々をその点で責めることもできない。
もちろん証言をしてもらうよう説得を試みることは悪いことではない。証言をとれたら、これほどすばらしいこともないからである。トライアル・アンド・エラー。私みたいに先に失敗を予想して実行しないのはダメやしね。ただし、それよりも元同僚から証言をとりつけたほうが確実である。
ということで、私は元同僚から証言をとりつけたほうがいいとアドバイスした。問題になっているのは、昼間の休憩時間が実際は仕事をしていたことの立証なのだから、それを目撃している元同僚の証言をとりつけるのである。それも、できるなら組合員の元同僚からでなく、組合に加入していない元同僚からの証言のほうがいい。利害関係がないため、証言としては強力だからである。
ただし、ハードルがある。休憩時間も働いていたと証言してもらったとしても、全部の日の休憩時間を働いていたわけでもない。いわゆる特定の問題を本社は指摘してくるはずだ。全部の日の休憩時間が休めず働いていたというならともかく、そうでないなら、「働いていた」日・時間の特定をどうするかである。特定ができなければ、立証が十分でないと言われるかもしれない。ここは団体交渉という示談の局面なのだから、請求の全部とはいわずに、半分以上とか80%はとか、そういう形で話し合いにもっていきたい。
賃金の請求権は私たち労働者にある。問題は、いつ、どれくらい働いていたのかを立証する責任がこちらにあることだ。立証責任がこちらにあるということは、立証できない場合のリスクをこちらが負担するという意味でもある。つまり、立証できなければ賃金を支払ってもらえない。
1⃣ 労働契約の締結
2⃣ 1⃣における賃金の締日及び支払日の定め
3⃣ 請求の期間における就労(労務の提供)をしたこと
4⃣ 賃金額の根拠となる合意又は就業規則、労働契約の定め
「類型別 労働関係訴訟の実務」P3
今回のような休憩時間も働いていたと主張する場合は、因果関係のはっきりしている早期に請求したほうがいい。時間が経てばたつほど因果の糸がもつれてしまって、あとになるほど不利になる。