「日本で長らく支配的であった長期雇用慣行」と、西谷敏「労働法第3版」に「終身雇用」について書いてあった。それは一面の事実で、公務員や一部大企業中心の見方だと思った。自分自身についていうと、父は公務員だったので「終身雇用」だったが、私自身は、新卒後の大企業から中小零細まで経験しており、周りに転職していない人を探す方が困難だった。
小関智弘という職人兼作家が大田区内の町工場を旋盤工として転々とされていて、「転々」がふつうであり、終身雇用なんてどこの世界のことかとも書いている。「会社の寿命30年」よりも労働者人生の方が長いのだから、終身雇用の実態は、30年以上の「寿命」がある大企業か公務員の、それも男性社員に限られたごく狭い世界のことである。
そのような限られた世界のことなのに、日本の労働慣行の一般的風景だと紹介されることにすごく違和感がある。まったくおかしな話であるとおもう。たった1%しか存在しない大企業中心の見方であり、その他99%の中小や零細は視野の外なんだろと思った。