労働者の団結権を破壊する口外禁止条項

個人加盟労組は「回転ドア」である

労働組合というと企業別労組がその代表格ですが、最近は、会社に労組がなかったり、あってもたとえば非正規雇用などで加入しづらいなどがあって、個人加盟労組が増えているそうです。ただし、個人加入なので、会社ではひとりとかきわめて少数なため孤立しがちです。その結果、それがそのまま従業員全体の労働条件の向上には結び付きにくいというのがあるかと思います。だから、せっかく労組に加入しても、個人の問題が解決したらそれで終わりになってしまいがちで、個人加盟労組は「回転ドア」呼ばわりされているのが現状です。そうしないためにはどうすればよいのでしょうか。

「首都圏青年ユニオン」に学ぶ

労組組織率16%となり、いまにも風前の灯火化しそうな現状の中で、飛ぶ鳥を落とすほどの勢いがある「首都圏青年ユニオン」が、参考になりそうなことを書いていました。その題名も「首都圏青年ユニオンの SNS 活用と 個人加盟労組の生き残り戦略」。成功例に学べです。要点だけ引用します。

SNSは労組活動の一部、それも極めて重要な

首都圏青年ユニオンでは、ツイッターとフェイスブックページを2人の専従者や執行委員を中心に運用しています。首都圏青年ユニオンの学習会や団体交渉や裁判の様子、過去に交渉した案件を紹介し、SNSも日常活動の一部と考えています。

なるほどね。これならこちらもすでにやっているよ。継続性がないのと、話題が限定的なのがあれだけれど。

「解決事例」をサイトで紹介することの重要性

労働組合の存在を届ける工夫として解決事例をホームページに10年分載せています。「自分の会社と同じようなケースを解決しているようなので相談しました」ということもあります。

うちの労組は発足して1年ちょっとだから、解決事例と言ってもそんなにないけど、それでも残業代など話題にできるものがいくつかありそうだ。具体的な解決事例をネット公開することで「自分の会社も同じやなあ」。その気づきが労組拡大につながるということです。

「ユニオンちよだ」の例

解決事例を載せているローカルユニオンは「新宿一般」「ユニオンちよだ」などがあります。「たたかう労働組合」であるならば、たたかった成果を積極的にアピールすることも、労働者に労働組合を届ける活動になります。

で、さっそく「ユニオンちよだ」を訪問してみました。こことは相互フォローの関係であり、その感想をツイートしました。

それに対する「ユニオンちよだ」からのお返事は以下のとおり。

どういった解決事例があるのかをサイトで一目でわかるようにすること

どういった解決事例があるのかがひと目で分かるホームページ作りも労働組合側に求められます。

早期解決、和解水準の引き上げ、口外禁止条項の阻止という効果

ツイートは社前行動と同じであり、前述のようにその場にいない労働者にも争議の存在を知らせることができて、思わぬところから「頑張ってください」という応援が届くこともあります。争議状況をツイートすることで会社に対して、この争議が「社会全体に知られている」からこそ、早期解決を追及することができます。中には、「ツイートを消すことが和解条件の一つだ」と会社から提案されることもあります。そういった場合は、「ツイートの削除と引き換えに、和解水準を引き上げることは可能か?」、あるいは「すでにツイートしたことで、社会的に認知されている争議なのだから、口外禁止条項を入れることはできない」とこちらに有利な展開に持っていくことも可能です。

残業代支払いの合意書に「口外禁止条項」がついていた

ここまで読んできて、さて、困ったことになってきました。本社から送られてきた「残業代支払いの合意書」に、なんと、この「口外禁止条項」がついていたんですよ。第三者に合意額のみならずその経過も一切口外してはならず。

残業代は給料支払い日に支払うが労基法上の原則です。残業代の支払いを怠ることは違法なのです。怠ったのが1か月やそれくらいならまだともかく(それも問題ですが)、2年も3年も怠っていながら、それにこのような条件をつける。支払ってやっから、この条件をのめというところですね。法律上の牽連関係のある条件ならともかく、残業代の支払と口外禁止とは何にも関係ない。牽強付会もいいところだ。

口外禁止条項は団結権への破壊である

さらにこういう問題があります。

口外禁止条項の一番の問題は憲法が保障している労働者の団結権を無効にしてしまい、それによって企業が違法行為を改善せず、労働者の地位向上が図られない点にある。

ここを一番私は恐れています。とりわけ、ネットによる組合員獲得のための記事出しをしている労組代表の私にとってこれは大きな心理的障害になりえます。組合活動をやっていく意欲そのものを失うのです。これは「恐れ」とかいうレベルの話ではなくて、現実にそういう効果が発生するのです。その不安がどうも共有されていないのが残念です。

本社の主張は細かい数字を第三者に告げるなという例をあげて、心配するほどのことではないと、団交時に説明していました。ところが合意書の付帯条項の記載はそうなっていない。そこが問題ですね。以下に示すような一般的な記載だからです。

甲と乙は、本件合意の内容及び本件合意に至るまでの経緯について、第三者に口外しないことを相互に約束する。

だから、団交で本社があげた例ではまったく安心できないですね。裁判で蹴っ飛ばすしかありません。

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